英語ってラクに習得できる!?
日本人は英語学習をダイエットと同じくらいの感覚で考えている人が多いように思います。効率的に(ラクして)身に付けられる方法を基準に、英語学習教材やメソッドを選んでる傾向が強いのです。
英語の参考書を買おうと書店に行ってみると、決まって目にするのが「スグに英語が身につく」というキャッチフレーズの本の多さです。これは英語学習ブログでも同じで、1ヶ月でスラスラ英語が出てくるとか、英語ニュースが聞けるようになるとか。そういう超画期的メソッドで溢れてるようなキャッチが多いのです。
その中でも英語学習教材ビジネスで成功してる「スピードラーニング」は本当にスゴイです。何がって、そのビジネスのうまさです。マーケティングの勝利。
「聞いてるだけで、聞き流すだけで英語を話せるようになる」
これはラクして英語を話せるようになりたい日本人の心をガッチリ掴みました。プロゴルファー石川遼くんのCMの後押しもあったでしょう。そして様々なリアル体験者のインタビューの生声でダメ押しです。
私は実際にやったことがありませんので想像ですが、英語がわかったような気持ちにはなると思います。英語とその日本語訳を耳で聞いてるわけですから。「この英語はそういうコトを言ってるのか」と。だからこそ「お試し無料」サービスができるわけです。やって「イケそう」と感じてもらえたら勝ち。
英語教材としてスピードラーニングを否定しません。使ったことないですし。ただ私が間違いなく素晴らしいと感じるのは、やはりビジネスとして考えたときのうまさです。
ラクな英語学習は希望的妄想
私は結構苦労して英語を身に付けたからではないのですが、痛みなく英語ができるようになると言うのはムリがあると思うのです。
例えばスピーキング。英語って結構口の筋肉使うんですよ。日本語と違って、イントネーションとリズムも大切なんです。日本語しか話さない口から突然英語が出てくるなんてことは考えにくい。できても挨拶程度の単語くらいじゃないでしょうか。
2才の子どもだって、「あー」とか「うー」とかから始まって、少しずつ言葉になっていくんです。親やテレビの真似して真似して、やっと言葉になる。いきなり「ママおはよう」とか話し出したりしません(笑)
聞く方にしても、私は外国人の発声のイントネーションに慣れるのに、ものすごく時間を費やしました。それこそ何年という単位。聞いても聞いてもわからないんですよ。聞き流してるわけじゃなく、全神経を英語に傾けてるのに聞き取れない。
人間は自分の知らない言葉は、単なる「音」としてしか認識しないのです。英語を知らない人が聞き流したら、耳に英語が入ってくるわけがないんです。英語っぽい音が聞こえるだけですね。頭に英語は何も残らず、日本語だけが残るのではないでしょうか。
もし聞き流すだけで英語が話せるようになったとしましょう。
そうなれば、あまりに画期的な英語習得メソッドとして文部科学省が学校教材に採用し、授業に取り入れるのではないでしょうか。日本は2020年東京オリンピックを控えていますから、政府としても国際社会に「英語ができる日本人」をアピールしたい、グローバル競争に勝つためにも英語は必須と思っているはず。
しかし、画期的な英語学習手法として、教育の現場で採用はされていないわけです
※スピードラーニングの制作・販売会社のエスプリラインは、長野清泉女学院中学・高等学校にて英語教育の現場に取り入れられたと宣伝してるようですが、他サイトの情報だとそれもどうやら眉唾な感じです。
コミュニケーションのない英語学習教材
極めつけは、スピードラーニングの学習法では、英語を話す相手が誰もいないということです。実際に話す相手がいないのに、ある日突然英語を話せるようになるって厳しくないですかね?
こういうどう考えても不自然なところがあるにもかかわらず、つい試してみたくなる。信じようと思ってしまうのは、やはり「英語を勉強せずに、ラクして習得したいという」甘い考えから来るのではないかと思うのです。
しかも、スピードラーニングって結構高いんですよ。一番安いセットでも5万円以上します(大人向け)。
ここにまた大きな落とし穴があるんですよね。「高いものは、いいものである」と言うまやかしが。マーケティングの4Pの一つに「Price(価格)」がありますが、まさに価格戦略です。エスプリラインさん、マーケティングうますぎですよ!
記事でも書きましたが、日本人は英会話に全く慣れていません。英語学習は受験に受かるのが目的であり、常に教科書で習い、授業は受け身で会話はなし、大人になってもTOEICスコアしか求められない。
英語はコミュニケーションツールなはずなのに、実に不思議な学習カリキュラムです。
しかも、英語を間違えてはいけないとずーーーーーーっと教えられてきました。英語を間違うことにものすごい抵抗を感じるのです。これは私も未だにそうです。正しい英語を使おう使おうとしてしまいます。
しかし、これも記事で書きましたが、間違えることこそが英語上達の早道なのです。なぜなら、間違いを恐れなければ、英語が口から出てきやすいからです。子どもは間違いを全く恐れません。むしろ何言ってるかよくわからないのに「ちゃんとわかってよ!」と怒られたりします(笑)
恥を捨て、自由にならないと一生英語はムリ
スピードラーニングを中心に話を進めてしまいましたが、実際に使って効き目がなかった体験をしたわけないですし、絶対に効果がないとまでは言えません。しかし「聞き流すだけで〜」のような簡単で、しかも短期間でマスターできることをアピールする英語学習ツールや英語学習ブログは、英語習得者から見ればどれもムリがあり過ぎます。
以前外資系会社の面接で、こんなやりとりがありました。
「あなた、1年の語学留学で英語話せるようになったの? 私はアメリカの大学で勉強して、英語話せるまで3年かかったわよ」
もちろん「英語を話せる」という基準をどこにおくかによっても変わってくるのですが、英語はそう簡単に習得できないということを如実に語ってる会話でした。
さまざま英語習得メソッドがありますが、ダイエットと同じようにすぐ痩せるような魔法の特効薬はないのです。そんな薬があったとしたら、むしろそれは劇薬すぎて、大きな副作用があることを疑うべきです。
それでは、英語コンプレックスのカタマリである日本人が英語を話せるようになるためにどうしたらいいか。
それは、恥を捨てて英会話を体当たりでやるしかありません。つまり答えは「間違いだらけでもいいので、英語で実際のコミュニケーションをやってやってやりまくる」ことです。
まずは英会話する行為そのものに慣れること。緊張してしまうと頭が真っ白になって、英語どころではありません。相手と話すこと頭で考えたことが英語となり、口から出るまでのプロセスに少しずつ慣れること。
「英会話やるにはボキャブラリーが足りないから」とテキスト中心の勉強をやる人もいますが、それは単に英会話から逃げる口実になってるだけ。初歩の英会話は中学英語でも十分過ぎるくらいです。
まずは数をこなしてみましょう。毎日25分の1ヶ月コースで4,000円〜6,000円程度のオンライン英会話ならお財布に無理なく、時間や場所も自由だからあなたの生活に合わせて好きなタイミングでやることができるのです。
「習うより慣れろ」はまさに英語学習のためにあるような言葉と言えます。多く英語に触れ、口から英語を「出す」ことに慣れていき、少しずつ話せるようになる。それが「言語」なのです。